2018.04.06

4/1(日)-2(月)、日本NPOセンター主催の掲題研修に参加しました。研修全体は2日間×全3回で、今回が初回です。内容は講義とワークが半々。評価学の基礎からロジックモデルの作成まで、体系的な知識を脳にインストールする歓びを感じつつ、全国からの参加者とともに、実際の現場で使えるようになるためにフル回転する2日間でした。内容の多くは、日本NPOセンターが2017年に発行した「知っておきたいNPOのこと 5【事業評価編】(http://www.jnpoc.ne.jp/?p=13646)」にも書いてあり、これすごく良い本ですがたった500円(税込)なので、興味ある方は買って、読んでみてください。

3/30(金)に参加した津富先生の【市民政策学習会 地域を強くする評価の力 ―社会的インパクト評価を「評価」する―】と合わせて、「評価」のことが少しずつ理解できるようになってきました。個人的には、大学〜大学院で専攻していた環境化学と近い分野に戻ってきたような感覚があります。現実の混沌から事実をどう抽出し、どのように判断・意味付けし、どのように活用することで、社会の進歩に貢献するか。かなりワクワクを感じる、新しいチャレンジです。

以下、2つのイベントに参加して得られた、現時点のぼくの理解や想起を共有します。研修ではもっと具体的な調査手法についての内容も多く含まれていますが、それらは割愛します。また、必ずしも各イベントの先生方が教えてくれた内容とは限らないので、事実と違っていたらすみません。。

●評価全般

・研修冒頭で、本研修は【市民性の観点から】NPOの事業評価を行うようになるためのもの、と紹介された。市民性の意味は一言では表せないけど、ぼくはカッコ内を【「ほっとけない」と思ったり、何かに突き動かされて活動している人たちのために】と置き換えて理解しています。

・「誰が、何のために、評価をするのか」。いつのまにか特定の目線で評価しないように、注意が必要。日本語だと普通に話してても主語が置き去りになることがよくあるので、強い主体が案外、無意識のうちに主語になる場合がある。前回の内閣府の休眠預金等活用審議会は、168件のパブコメが集まったけど8分で終了した。。資本主義の行き詰まり、お金の行き場を新しく作るための仕組みとして、特に資金提供者側(行政も含む)から、休眠預金も評価も大きな期待が寄せられている。その評価は、誰のためにあるのか?

・中間支援者として、評価を学ぶことはとても大事。だって、評価のことをよく知らない人に、自分の団体を評価されたくないですよね。。ということで、僕自身これからたくさん学びたいし、興味のある人で学び合う場も作りたいと思っています。

●「社会的インパクト評価」と「評価学的評価」

・「社会的インパクト評価」と、本研修が扱う「評価」はかなり違う。前者はイギリスの投資家周辺で生まれたツールで、目的は成果を把握することに特化しており、評価対象も事業によってもたらされる「成果」に絞られている。内閣府「社会的インパクト評価の推進に向けて」(2016年)にも、【本WGで議論した「社会的インパクト評価」は、広く社会的課題の解決を目指す事業や活動が生み出す成果(短期、長期のアウトカム)を把握する試み】と記載されてる。ロジックモデル作成にも、実際の因果関係の検討(検討の結果を「エビデンス」という)は想定されていないため、「期待されるストーリー」に近い。

・一方で本研修が扱う評価は伝統的な評価学に近く、LMの因果関係の確認や、事業プロセスの改善など、「事業の成果」でないものも評価対象に含み、目的にもプログラムの開発改善や組織学習などが含まれる。事業のアウトカムを対象とするインパクト評価も内包されるが、その場合もランダム化比較試験などを用いて、なるべく純粋に事業の影響のみを測定することが推奨された。(このあたりは次回研修でより深掘りするそうです。楽しみ)

●ロジックモデル(LM)

・LMは因果関係を簡略化して確かめるツールで、1980年代の大型公共政策(レーガノミクス)の成果を測る際に発展し、以降もさまざまな応用形が作られてきた。市民性という意味を踏まえると、NPOの現場では「無償のフィードバック」が大きな原動力になるケースが多く、一方的な「する」「される」の関係にのみ落とし込む現在のLMは単純すぎるのかなあと思う。矢印を還流可にするなど、改善の余地があるかもしれない。ただし、複雑なツールほど扱いづらい、という問題もある。LMはあくまでプロセス改善のツールなので、なるたけシンプルなほうが使いやすい。

・懸念点はLMが資金提供者側の判断材料にすでになっている、ということ。もちろん出来不出来ではなく、LMをコミュニケーションのツールとして使用したり、「これをもとにどう組織内のプロセスを改善したか」などツールをどう使ったかに着目する助成財団なども多いと聞くので、現時点でそこまでの混乱はないのだと思う。ただし今後、LM自体が資金提供者に向けた「説明のための資料」に位置付けられないかは心配。

●コモンズの形成〜まとめ

・評価と資金調達が関連したり、短期的で測定可能な成果に偏重すると、「測定しにくい/数値に表れにくい成果の切り捨て」が起きる可能性がある(成果の矮小化)。投資に値しない受益者は、支援されない、投資されないのか?という根本的な問い。そもそも、「社会的」という言葉には、「社会権を平等に保障する(=福祉)」という意味が含まれている。

・社会的事業やその評価は、「コモンズ(公共的価値)」を形成することを目指しているか。注意深く実施された評価によって、社会的成果は「知のコモンズ(エビデンス)」として社会に蓄積される(どう「注意深く」なのかはもう少し考えます)。また、資金提供者側が評価の特性を理解し、社会的成果を矮小化させないための仕組みを整えることで、「福祉のコモンズ(実際の社会での課題解決)」が形成される(同じく「具体的にどのような仕組みか」はもう少し考えます)。

・「お手盛りの評価」によって特定の団体への資金調達を促すのではなく、知のコモンズが豊かになることで、福祉のコモンズが豊かになる、という良い循環を作れるようになるための、「Integrityある評価」を支援できる人材になりたいなと思います。

以上