2018.03.26

「ーーー文学者や芸術家の役割は、そんなものではない。革命を抜きにすれば、社会などに関わるべきではない。ましてや、人々の幸福に寄与する? 社会を幸福なものにする? 社会に貢献する? ふざけてはいけない。連中の仕事は、精神の自由度を拡大させ、社会に蔓延する嘘を暴くこと、それに尽きる。」

村上龍『オールド・テロリスト』より抜粋

上記は物語中のテロリストの発言なので、過激だし、偏っているし、矛盾を含んでいるのですが、しかしこの作品において最高に輝いているシーンの1つだと思う。

いまの日本社会の大部分は一人一人の価値を多様化させず、なるべく画一的な能力や志向の人材を生産しつづけるようにチューニングされているので、生活しているだけで「精神の自由度」を高め続けるような環境には、残念だけどなっていない。なので、意識的にそこから脱しようとしないと、ネジや歯車のように一人一人が使い古されて、磨耗して、十分に顧みられないまま、終わってしまう。

社会に自分の魂を握られた状態から、次の一歩を進むためには、心の奥底に蓋をされて押入れられた自分の、かすれてしまって声にならないような声をよく聞いて、その声と対話しながら、次の行き先を見つけるのがよい。(体験談)

NPOやソーシャルビジネスの目指しているのことを「(あらゆる主体の福祉や生存権の実現のための)社会の全体最適」とざっくり捉えたとき、たまに主語が「社会」になったり、個人や組織が「パーツ」になったりすることがある(そういう人や場面に遭遇したことが何度もある)。そのほうが効率がよいし、コントローラブルだし、計画しやすいので、場面によってはその方がよいだろう。救命救急とか震災復興とかはスピード命だから、そのほうが向いていると思う。

でも一方で、その方法論だけで社会づくりを行うのはかなり危険だ、とも感じる。統率的マネジメントでなく、ダイバーシティや不確定要素もふんだんに含まれた包摂的マネジメントによる全体最適化のほうが、ぼくは好みだし、何より、ぼくにとって生きやすい社会になりそうな気がする。

そういったことをたまに深く思い出すために、アーティストの力を借りて「全体主義と対峙するための作品集」のような感じで数回投稿予定です。

No.1

作品名:香山哲のファウスト1(漫画)
連載年:2006年1月〜2013年7月
WEB公開版(一部):http://kayamatetsu.com/pagework/w2/ftry1.html
単行本購入:http://shikaku.ocnk.net/product/274

コメント:

NPO業界に入る前にこの漫画に出会って、その時のぼくはちょうど主人公の中道シーゲル君みたいな状態だったので、かなりガツンと来ました(ノスタルジックな性格ではないけど)。

冒頭の「うずまくうずでストームする」のくだりも最高ですね。よくわからない、他人に共感もされないような、自分の思いやエネルギーをこそ大切にしよう、という気持ちになります。

連載中の第二部も本当に面白いです。また、香山哲さんの他の作品や、日記やtwitterもたいへんよい。フォローしておくと人生が豊かになる、同年代のアーティストだと感じています。